THIS IS IT

4回観た。明後日までにもう一度観られるだろうか。
マイケル・ジャクソンが死の直前まで準備をしていたコンサートのメイキングであると同時に、実現されなかったコンサートの映像上での再現でもある。
1度は観ておかないとという思いだったのだが、劇場で、大きな画面と音で観たい。観られるときに観ておきたい、という気持ちがどんどん強まってゆく。当然、使える割引サービスは使い倒した。

MJが天才であるなどとは今更改めて書くまでもないが、それでも特筆せずにはいられない才能。
表現したいものがあり、表現する手段を持ち、音も動きも全ての完成形が脳内に描き出されている。それを他人に指示することができ、彼のために力になりたいと願う人々が周囲に集まる。「ファンを裏切りたくない」とオリジナルの音の再現を求めるが、それはオリジナルをなぞるという意味ではなく、その先に更なる高みが観えている。
『アーティスト』という言葉がこれほどに相応しい人はいないと思う。彼以外に「KING OF POPS」を名乗れる人もいないと思う。

観れば観るほど、彼の喪失を惜しむ気持ちが強くなるばかりだ。
決してファンという括りには入らないけれど、ジャクソン5時代からリアルタイムで彼の音楽を聴いて来ている。彼の音が身体のどこかにしみ込んでいる。
ステージの上の彼は、自信があり、人を信頼することを知っており、チャーミングで、フレンドリーで、謙虚だ。スタッフが彼を慕い、敬愛し、なおかつ祭り上げるのではなく、一緒に協力して何かを作り上げようとするパワーが漲っている。

決してMJ礼賛一辺倒ではなく、ドキュメンタリーとしても抑制の利いた優れた仕上がりになっている。だから何度観ても発見があり、見る度に涙がこぼれる。スクリーンの中の彼が余りにも生き生きとしていて、どうして今、この世界にいないのだろうという疑問すら湧いてくる。
あと二日しかないけれど、もしも未だに迷っている人がいて、劇場で観る機会があるのにも関わらずDVDでいいやとか思ってるのなら、とにかく劇場に駆けつける事を心からお勧めする。

輝け! 主婦バンド@ルテアトル銀座

エド・はるみ主演の音楽劇(というか)。

詳しい事はまたあとで書くと思うけど、とても感じのいい舞台だった。こういう感想はあの話に対してはちょっと的外れだが、やはり全体の印象は、感じのいい、品のある、可愛らしいもので、これはエド・はるみの資質に拠るところが大きいのではないか。
俳優たち自身による、決してお座なりではないちゃんとした生演奏、モト冬樹のギターでハイウェイ・スターが聴けるのも嬉しい。
帰り際、リピーター割引と銘打って、S席のチケットを持った人に対して割引値段で次回以降のチケットを販売していた。初日の今日はほぼ満席だったが、この先苦戦が予想されているようだ。

エド・はるみと一緒にバンドを組む主婦仲間が、バービーボーイズの杏子、元モー娘。中澤裕子、今や美容家としての活躍の方が目立ちそうな秋野暢子。この中では中澤裕子が一番の下っ端に見えるのが面白い。

他に、モト冬樹酒井敏也、高校生役で音楽スクール出身の若手が4名出て、最後のバンド演奏場面ではしっかり盛り上げてくれる。

私の中のあなた@中野サンプラザホール

観る予定の人は読まないでね、な「私の中のあなた」

ネタバレ注意。












試写会に行ってきた。
「泣ける」とか「感動」がキーワードのアメリカ映画で、アンケートにも「どの場面で一番泣きましたか?」「どのシーンに感動しましたか?」みたいな項目が並んでいる。感動して泣かない私は人でなしかとすら思ったけれど、それには理由があって、数年前に出版された原作を読んでしまっていたのだ。

原作を最初に読んだときは泣いた。設定がすごく巧みで、こんな立場に置かれたら人間どうしていいかわかんないじゃない、みたいな真綿で締め付けるような(←誤用)じんわりとくる感動作だったんである。
ところが結末を知ってから2度目を読むと、全てがあまりにもぴったりと都合良く出来過ぎていて、何だかなあと思っちゃうのだった。そして、これはいかにもアメリカ映画が好きそうだな〜、この辺りのシーンなんかこんな風に演出したりして、なんてことを想像したりするのだった。
つまりは映画でも「あの結末に至るまでのプロセスなんでしょ」という気持ちが拭えず、途中途中のいいシーンが胡散臭く感じられてしまったのだ。

ところが、映画の結末は原作とは違っていた。
これなら納得できる、と思わせるラストで、やはり制作側でもあのラストをそのまま持ってくるのはまずいと判断したのだろうと推測する。
お陰で登場人物の立ち位置がすっきりして、物語の骨格がストレートに伝わってくるように感じた。
原作を知らずに、映画で初めてこの物語に触れたら、印象は随分変わったに違いない。これから観るつもりの人は、原作には手を出さないように。


設定はすごいんだけど、映画としては普通の出来で、決して傑作とは呼べない。特に音楽の使い方が古くさくて退屈。それぞれのシーンに発見がなく、どこかで観たような場面のつぎはぎに感じられることも多々ある。
ひたすら、主人公一家の置かれた状況設定の巧みさ、着眼でひっぱる映画だ。
母親役のキャメロン・ディアスも妹娘役のアビゲイル・ブレスリンも姉娘役のソフィア・ヴァジリーヴァも好演。アレック・ボールドウィンはじめ、他のキャストも良かった。
褒めるところの沢山ある映画だけれど、作品としては凡庸だと思う。
原作をうまく捉えているんだけれど、何故なんだろう、心に響いてくるものが足りないのは。
やっぱり原作を知っていた所為か?
それとも私の心が汚れているからか? そりゃあ治せないなあ。